今日で、大好きだったこのお家ともお別れ。
福島区の野田というところに、ひっそりと佇む一軒の長屋。
駅から少し歩くと突然現れる石畳の先に
ひらりと舞う透き通った白い暖簾。
そこが、月に一度、私にとって癒しの場所でした。
『茶亭 月乃音』
一歩その中に入ると、そこは別世界
ハッとするような世界が広がっているのです。
昨年の7月に初めてここを訪れた時に
強い衝撃を受けたのを今でも覚えています。
福島区でありながら、戦争で焼け残った長屋がまだ残るこの場所に
ここは道?と思うような、突然斜めに入っていく石畳の小道があるのです。
通り抜けられるその路地の端っこにそのお家はありました。
暖簾をくぐり、中へ入ると
古さと新しさ、日本と中国とが入り交ざり
それが見事に調和されている、なんとも言い表しようのない素敵な空間。
そして中から出てこられた女性、渡邊乃月さん
茶亭 月乃音 は、渡邊乃月先生が主催する中国茶のお教室です。
先生の醸し出す空気は、周りの全ての人を包み込んでしまう。
小柄で、可愛らしくて、
そして、柔らかい。
それでいてしっかりと、一本の芯が体の真ん中に通っている感じ。
先生が話す心地よいその声とリズムに、ついうっとりと眠りへおちてしまいそうになる。
渡邊先生が作り出すこの空間を一度味わってしまうと、もうやめられないのです。
月に一度、ここへ足を運べるのが嬉しくて、気がつけば通いだしてから一年以上も経っていました。
今日はお教室の日。
いつものようにクラスが始まり、先生の口から出てきた言葉
それが、なんと移転のお知らせでした。
先月のレッスンの時に、ちらっといつか住みたい場所のお話をされていたけれど、まさかこんなに急に決まるとは。
場所は、芦屋川。
今のお家は大好きだったし、遠くなっちゃうー。。と、少し悲しんでしまったのですが、先生のお話を聞いていると、その場所がとてもキラキラと輝いてみえてきたのです。
いつもなら半年から一年ぐらいかけて探す物件を、今回は一軒目で決めてしまったというのです。
山のふもとにある、古ぼけたマンション。
小川がすぐそばを流れていて、窓を開けると川のせせらぎが聞こえるんだって。
もうそれだけで素敵。
お茶の仕入れで、中国や台湾の田舎にある茶畑へしょっちゅう行かれる先生がおっしゃるには、やっぱり自然の中で飲むお茶は格別に美味しいんだそう。
そんな場所を、たまたま発見したこと
そしてお茶教室へ行く道中で、芦屋川や周辺の街全体を楽しんでもらいたかったということ。
今の場所である野田周辺がどんどん変わりつつあり、なんだか落ち着かなくなってしまったということ。
それがタイミングというものなんだなぁと、先生のお話を聞いて妙に納得。
先生にとって、きっとそこが居場所。いるべき場所。
今の空間が今日で最後なんだという悲しみと、遠くなってしまう不便さも、どこかへ吹っ飛んでしまった。
今まであまりご縁のなかった神戸にも、これを機に足を運んでみよう!
と、なんだか私までやる気が出てきてしまったりして。
「今来てくださっている皆様を、はがいじめにして連れて行こうとは思っていません。笑
でも、一度は足を運んでみてほしい。それで引き続き通えるかどうか決めてくださいね。」
と、可愛らしく話す先生の言葉から、今以上に素敵な空間になるんだろうなということが伝わってきました。
来月の教室は先生のお引っ越しでお休み。
10月が楽しみで仕方ない。
まだまだ暑いけれど、夏の教室は今日で最後。
夏の終わりに、オレンジアイスティー。
搾りたてのオレンジジュースを、正山小種で割って大人っぽく。
グラスの淵にはグラニュー糖を。